「Bird Dance〜愛の言葉に代えて〜」より


❤ はじまり ❤    


「わっ、なにこれ! おもしろっっ。ハハハ、すげーのな」
 山本武は手を叩いてテレビを指差す。
「そうだね」
 同意する沢田綱吉。
「―――!」
 この場にいる最後の一人、獄寺隼人は無言で液晶画面を凝視していた。
 ごくん。
 隼人少年は大きく唾を飲み込み、心の中で決意表明する。
―――これだ!!

 イタリアからやってきた爆弾小僧こと獄寺隼人は日本で運命的な出逢いをした。
 生涯のボスと定める沢田綱吉と――――――――それから、生涯の恋人として山本武に。
 はっきりいって、すでに『野球バカはオレのもの』と無意識に思ってはいるものの、まだ正式にお付き合いはしていない。
 告白をしていない―――というか、ツンデレ気質が邪魔して出来ずにいたので。
 その一方で、居眠りしている山本の唇を奪ったことは幾度となくある。
 素直になれない彼でも、相手が眠ってさえいれば己の欲望に正直になれてしまうのだ(笑)

―――オレの前で無防備に眠りこむ野球バカが悪ぃ。

 などと、若干言い訳めいたことを思ってしまうのはご愛敬というものだろうか。


「オイ」
「ん?」
 沢田家を辞する際、獄寺は固い声で山本を呼びとめる。
「明日―――」
「うん?」
「明日の夜、ウチに来い」
「獄寺んチ? えーと、一人で―――ってこと?」
「ああ」
「いいけど。部活あるから少し遅くなるかも」
「………わかった」
―――それはそれで都合が良い。
 これからイロイロ準備もあるので、時間に余裕が出来るのは悪くはない。

 ハハっ。
 唐突に山本は楽しげに唇を綻ばせた。
「なんだ?」
「一人で行くの、はじめてなのなー」
 言いながら、嬉しそうな表情を隠すことなく見せる。

「―――うっ」
―――クソッ。
 山本相手に毒ついたわけではなく、
―――カワイーじゃねぇか!
 あまりに山本の言動が可愛い過ぎて、うっかり鼻の奥がツンとし、鼻血が出そうになってしまった自分に対して活を入れた。
 
 画して、獄寺の『LOVEげっちゅー作戦』は計画実行されることとなる―――!!


以下本誌へ続く